第2章―調査方法

調査対象サイト及び調査方法
調査の対象は検索エンジン「Yahoo! Japan」に登録された「モーニング娘。」関連サイト(2004年1月2日時点)の中から所属事務所などの公式サイトを除いた、ファンが非公式に運営しているウェブサイトの168サイトとした(詳細:補遺―調査対象について)。
対象サイトは「モーニング娘。」カテゴリと、そのカテゴリの下位層にある「画像」カテゴリと、「メンバー」カテゴリに登録されている私設ファンサイトとなっている。ただし、「メンバー」については調査対象を現メンバー15人(詳細は補遺、2004年以後に「卒業」となる安部なつみ、加護亜衣、辻希美を含む)のサイトに限定した。また、同一管理者が作成していると認められたサイトの重複分は除外した。
無作為抽出ではなく「Yahoo! Japan」に登録されているウェブサイトを調査対象とした理由は検索エンジンとしての認知度が高く、また登録には内容を充実させて審査を通過する必要があるからである。つまり、登録サイトは新規参入サイトの手本となりうるような評価の高いサイトとして認識されている可能性が高いからである。
2003年12月26日から2004年1月2日にかけ、筆者がサイトを実際に閲覧して次項以降で述べる調査項目に基づいて調査した。対象サイトのインデックスページから直接リンクされているページについては完全なチェックを行った。また、他者が権利を有する著作物かどうかとは関係なくサイトの日記やコンテントも閲覧し、管理者や訪問者の著作権に対する意識を質的な面からも分析を試みる。
ウェブサイトの閲覧はInternet Explorer 6を使用し、集計結果の分析にはSPSS9.0Jを使用した。

分析の視点
本調査では前述した調査課題を前提として以下に列挙する調査項目を定めた。「自らのウェブサイトに対する著作権意識」「他者の著作物の無断利用の実態」「ウェブサイトの特徴」が主な項目となっている。
調査課題1に基づいて、自らのサイトに有する著作権に対しての意識を明らかにするために本調査では以下の項目を調査し、単純集計に加えて下の2つの項目についてクロス集計を行った。
a) cまたはそれに準ずる表示の有無
b) リンクに関する記述の有無
また、調査課題2に基づいたメディア媒体別の無断利用の実態を次の8項目の分類で調査した。
c) 写真
d) 映像(静止画)
e) 映像(動画)
f) 楽曲
g) 歌詞
h) 新聞記事
i) 雑誌・書籍
j) その他
著作権10条の著作物の例示に従い、「ブロマイド写真」「雑誌グラビア」といった写真の著作物(c)、彼女たちが実演しているテレビ番組やミュージック・ビデオのワンシーンである「静止画」、連続したファイルで保存された「動画」といった映画の著作物(d、e)「モーニング娘。」が実演しているCDの中で使われている「楽曲」「歌詞」といった音楽の著作物(f、g)、「新聞記事」「雑誌・書籍」といった言語の著作物(h、i)について無断使用の調査を行った。また、これらの分類に含まれないその他の著作物(j)についても調査した。
本調査では、調査課題3について侵害の態様を使用目的別の分類に基づいて調査を行った。
k) 著作物の複製・頒布に関しての著作権侵害
l) 著作物の引用に関しての著作権侵害
m) 著作物の同一性に関しての著作権侵害
最初に挙げた項目(k)は自分の所有する著作物を他人に公開したい、共有したいという目的で行われる無断利用だ。続いて挙げる項目(l)は自分のウェブサイトのコンテントの引用の目的で行われる無断利用だ。適法の場合もあるだろうが、判断が困難なために本調査では厳格にすべて無断利用として判断する。最後の項目(m)は著作物を改変し、新たな著作物を作成する目的での無断利用だ。調査においてはこれらの3項目の一つでも認められた場合、「無断利用サイト」として集計した。また、調査課題4の検討のために著作権帰属の明示と上記した3つの項目についてもクロス集計を行った。
さらに、著作物の無断利用について著作者が何らかの「但し書き」を記述しているかどうかも調査した。
n) 無断利用の「但し書き」の有無
また、サイトの特徴についての調査項目を列挙する。
アイドルのファンサイトには「アイドルが好きであるという意思表示」「情報収集」「ファン同士の交流」「ファン層の拡大」という4つの目的があることを指摘した。本調査においては、サイトのコンテントに注目し、自分の日記やイラストなどが主なコンテントとなる「表現型」、メンバーのプロフィールやメディアでの露出状況を掲載した「情報型」、ファン同士のコミュニケーションのための「交流型」、そして、それらの二つ以上の要素が混在している「複合型」の4種類を各サイトの目的として分類した。
o) コンテントからみたサイトの目的
第1章第2項で個人ウェブサイトの増加には無料ウェブスペースの登場が関係あると論じたことから、利用サーバーについても調査した。
p) 利用サーバー
また、CGIを利用したサービスなどコミュニケーション性を追求するものであるかどうかの指標として、以下の項目を調査した。
q) メールアドレス・メールフォームの有無
r) 電子掲示板(BBS)の有無
s) チャットルームの有無
対象サイトが無償性を有しているかどうかを示す指標として、以下の項目を調査した。
t) 広告バナー・アフィリエイトシステムの有無
ただし、多くの無料ウェブスペースサービスやCGIレンタルサービスでは、自動的に広告バナーが付加される場合が多いが、本調査においては、管理者が自分の意思に基づいてそういったサービスを利用している場合のみに限定した。

これらの調査項目について、単純集計、または必要に応じてクロス集計を行った。